2008年10月19日 まほろばロード橿原の「万葉文化館~藤原京跡~小房町」を歩く

まほろばロードは平城京から藤原京・飛鳥京と古の都を東の山沿いに歩いて、歩くメンバーのいろいろな視点で観光の振興や町づくりに活かせる要素を調査し抽出する試みです。第6回フィールドワークは初回の終点万葉文化館からスタートして飛鳥京と藤原京の間を歩きました。平城京から奈良市北部を通って山の辺の道北道を奈良市藤原町まですでに歩いています。また天理の石上神宮から桜井市の大神神社までもすでに歩いています。残すは天理の石上神宮から北側をあと2回に分けて、桜井の大神神社から南側をあと2回に分けて歩くのを残すだけとなりました。

<集合日時・場所>
平成20年10月19日(日)9:45am 県立万葉文化館前

<行程>
万葉文化館~飛鳥坐神社~飛鳥公民館~飛鳥水落遺跡~大官大寺跡~みるく工房飛鳥(西井牧場)~天の岩戸神社~天の香具山神社~八釣地蔵尊山~畝尾坐健土安神社~畝尾都多本神社~奈良文化財研究所飛鳥藤原宮跡発掘調査部~藤原宮跡(大極殿跡)~橿原市藤原京資料室~おふさ観音~橿原市役所にて本日のまとめ

[人]
●明日香村政策調整課 藤田 尚さん
 飛鳥公民館での総代さんのお話のお世話と、水落遺跡までのご案内をいただきました。
●橿原市観光課 岡山鈴代さん
 橿原市観光課 渡海恒さん
 資料の準備と水落遺跡以降の行程をご案内いただきました。

[暮らし方]
●田んぼを30cm掘ると1400年前の遺跡が眠っているという飛鳥坐神社や飛鳥寺の地元飛鳥大字の暮らしについて、大字の総代さんからお話を聞くことができました。108軒のうち約半分の55件が農家ですが、明日香法の第一種歴史的風土保全地区に指定されているため、ビニルハウスひとつでも高さ広さが厳しく規制され農業経営もままならないといいます。それでも大字民は、「せっかく飛鳥を訪ねていただいたお客様に草ぼうぼうの田畑は見せられない」という意識をみんな持っているとか。飛鳥坐神社脇のポケットパークのトイレ清掃も、大字を構成する八つの組の完全輪番制で美しく清潔に保たれています。こういう目に見えない下支えがあってこそ心地よい観光があるのだと思いました。われわれにもできることとして観光客のマナー啓蒙も下支えの一つになる可能性があります。

[伝統行事・祭事]
●飛鳥坐神社(あすかにいますじんじゃ)で2月第1日曜日(元は旧暦1月11日)に行われるお田植神事「お田植祭( おんだまつり)」には夫婦和合の所作があり、五穀豊穣を願う天下の奇祭として知られています。家々に提灯を出す古い伝統を持つ祭りは他の祭もできるだけも残したいが、少子化などの影響がもろに出て実施でいないことも多いようです。蓮華祭り等新しい祭りにも取り組んでおられ、神戸の長田区の震災経験者を招待して交流などもされています。新しい祭も組み込みながら祭を次世代へのつなぎの場として大切に考えておられました。古い祭りを次世代に伝え残す上でホームページや郷土誌等のメディアの必要性も感じました。

[景観]
●今回のルートの景観の特徴の一つとして虫籠(むしこ)窓の古民家が多く見られました。飛鳥大字のメインストリートの虫籠窓の家は養蚕農家の名残で、築130年~140年の建物だそうです。天の香具山の麓、天岩戸神社辺りでは虫籠窓の家にはさまれた路地の頭の上に黒く太い光ファイバーケーブルが架かり、不釣合いな景観だと思いました。最先端の施設が景観的には時代遅れを感じてしまいます。電線地中化の優先順位があるとすれば歴史的景観は優先して欲しいというのが実感です。

●その意味で藤原京跡は何もないけどそれゆえに、花の海の向こうの大和三山がくっきりと浮かぶ景観は絶品でした。一面のコスモスの海など、地元ボランティアのお世話があってのことですが、そのスケールは感動ものでした。観光客の立場からはさらに広い花の海に、とどうしても願ってしまうのですが、それには情報発信が不可欠です。その発信基地は、土産物を買うとすれば…と考えていると一つの施設が目に付きました。

[施設]
●飛鳥池工房跡地に建つ万葉文化館は、遺跡調査の後設計変更までして飛鳥池工房跡の劣化を防止しながら地中に保存する役割は納得できました。高松塚やキトラ古墳の壁画の修復に苦労されているのを見ると、施設の真上に地中の様子を復元してあるので充分ともいえます。人形による万葉時代再現や絵画による歌の情景表現は、ボランティアガイドによる説明がついてはじめて生きてくる素材だと思いました。

[情報拠点]
●藤原京資料室では、観光ボランティアガイドの方が熱心に説明をしてくださいました。花作りボランティアや、ライトアップグループの情報発信基地にも使えないか。同じような思いを抱いたメンバーからもミーティングで意見がでていました。また今回の道中、土産物を買えるようなところも見当たりませんでしたが、ボランティア団体の資金作りのための物品・土産等の販売場所提供が、情報発信基地にもなる可能性も感じました。

[提案]
●藤原京資料室では古代装束人形の展示もされていました。これまでまほろばロードを歩いた中で、三輪では小学生向けに古代の染色体験なども行われていました。装束のような古代の染色を体験してみると郷土の歴史への愛着がわいてくるものです。情報拠点での学習活動の一環としてこのようなこともヒントになるかなと思いました。これが発展すればボランティアによる草木染の小物作り、土産物としての販売などにもつながるような夢も浮かびます。

[面白発見]
●コース最終のおふさ観音はご住職が市の観光協会会長も兼ねておられると聞きました。拝観も駐車も無料はさすがです。この日は秋のバラ祭の初日にあたり花の盛りはこれからですが、境内にはもうよい香りが漂い参拝者も多く訪れていました。きっとリピーターもたくさんいらっしゃることでしょう。何度訪れても癒されるところという感じがします。お寺のパンフレットがなんと三つに折りたたんだ名刺大の大きさ。本当にシンプルなのですが、お寺の縁起から、春秋のバラまつり、風鈴まつりという年中行事の案内、付近図、交通案内までコンパクトに収められています。ずっと名刺として持っていて、心の渇きを感じたら訪れてくださいねといったメッセージを感じます。名刺大のパンフレットもさすがだなと思いました。

[調査のまとめ]
・全員の一致した感想は本当に長閑さを満喫できるルートだということです。
・飛鳥大字ではメンバーから総代さんへの質問がつぎつぎにありました。その中で印象的だったのは百軒ちょっとの戸数のうち30軒が何かの役員をしているというお話です。これからはボランティアとの連携の時代と感じているともおっしゃっていました。負担感よりも楽しいことが多いのでなければ、よい景観や地中の遺跡をお守りしていくモチベーションが維持できないとおもわれます。風景街道まほろばもそんな緩やかな連携の仲立ちに役立つ存在になれればいいなと思います。
・天の香具山頂上へは時間的に登れませんでしたが、頂上からは木が茂って大和三山の他の二山は見えないと聞きました。このルートの最大の呼び物は大和三山のいろいろな表情が楽しめるビューポイントですから、香具山からも竹伐採等で可能になるビューポイントがあればぜひ作って欲しいというのが希望です。
・藤原京跡では現在発掘中の箇所で「発掘の今」の説明も欲しいという要望も多くありました。それが奈良文化財研究所飛鳥藤原宮跡発掘調査部への回遊にもつながるのではという意見です。「奈文研」の日曜開館もメンバーからの要望です。

次のまほろばロードは12月初旬に山の辺の道南端の大神神社~桜井を歩きます。

虫籠(むしこ)窓の古民家虫籠(むしこ)窓の古民家

長閑な香具山遠景長閑な香具山遠景

コスモスの海に浮かぶ耳成山コスモスの海に浮かぶ耳成山